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南京2011(2)-定林山荘 [中国]

 さて路侃さんの家、というのは南京市内の紫金山の広大な自然公園の中にある“定林山荘”だ。dinglinmenkou.jpg
 定林山荘は、表向きは紫金山に設けられたさまざまな散策・観光施設のひとつで、『鍾山定林寺劉勰与文心雕龍紀念館』という展示施設である。紫金山はもともと鍾山と呼び、ここに劉宋元嘉16年(439)にインドの高僧竺法秀が創建したとされる南朝の名刹・上定林寺があった。そして南朝梁のとき、文学家・劉勰がこの寺に住み、中国を代表する文学理論書のひとつ『文心雕龍』を著した。また北宋の政治家で、「唐宋八大家」にの一人に数えられる文学家としても有名な王安石が、失脚後に隠棲したのもこの鍾山だった。
 ちなみに定林寺というと、考古業界のみなさんは韓国の扶余にある百済の定林寺を思い出す人も多いだろう。南京鍾山の定林寺は近年、発掘調査で遺構が確認され、位置も確定した。そこから出土した瓦は、百済定林寺のものと酷似しており、どうやら南朝の都・建康の定林寺と関係があって、ここから百済に造瓦・造寺の技術や工人が移動していった可能性が指摘されて注目を集めている。さらにその中間地点ともいえる山東省莒県にも定林寺があって、やはり南京鍾山の定林寺と関係しているらしい。このことに関係する出土遺物や解説パネルも、『鍾山定林寺劉勰与文心雕龍紀念館』に展示されている。
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 話が大きく逸れたが、定林山荘はそういう謂れで建てられた展示施設というわけだ。現代に建てられたものではあるが、古典的な三進殿院式の園林民居建築で、古建築と同じような建材、造りとなっている。路侃さんがここを自宅としているのは少し不思議だが、この紫金山じゅうの文化財の調査研究と管理をしている公的機関の研究員だから、管理人を兼ねて住んでいるというところだろう。
  ↑ 展示室になっている主房。
 風呂もトイレもない。トイレは、夜になると本当の真っ暗で何も見えない紫金山の散策路にある、公衆トイレを使う。懐中電灯で遠くを照らして、あそこだ、わかるな?あそこだ、あそこ!と言われて、わかると何となく答えてしまったが、じつはぜんぜん見えん!そして、小便はトイレに行かなくていい、定林山荘の庭の草木のところにしなさい、とのこと。はい、そうします。
 では早速、風呂に行こう、風呂は外の風呂屋に行くんだ。・・・どうやって行くんだろう?まさか歩いて?遠いぞ・・・と考えていたら、路侃さんが原チャリを引いてきて、さあ藤井さん、後ろに乗るんだ!、と。ええ!?まじですか!? そして夜の真っ暗な紫金山を駆け抜ける原チャリ路侃号。南京では有名な紫金山の梅林の散策路、歩行者専用で細くてくねくね曲がってますが、けっこうなスピードでここもノーブレーキで走る。明の孝陵の神道も石人石獣の間を路侃号は全速力で走ります。真っ暗ななかの石人、まじで怖い!!一人だったら絶対いやだ。
 日本では外の風呂屋を「銭湯」というが、中国では「浴室(yu4shi4)」と書いてある。入口のカウンターで靴を預けてお金を払うと、ロッカーの鍵をくれる。脱衣場で服を脱いでロッカーに入れて鍵をかけ、鍵を手首に通して浴場に入る。ここまでは日本と同じ。浴場の入口の台にタオルが積んであって、それを1枚持っていくのだが、なぜか湿っている。・・・??。浴槽に入っていると、さすがにここでは石鹸こそ使わないが、浴槽内でタオルを浸けてジャブジャブ幼児の身体を洗うお父さん。他の人も同じ。うーん、そうか。浴場の洗い場にはベッドが2台あって、ここに寝そべると、従業員のおにいちゃんとおじさんが勝手に垢すりをしてくれる。けっこうきもちいい。それが終わり、身体を石鹸やシャンプーで髪と身体を洗うのは固定のシャワーの場所で。さらに最初の日に行った「浴室」には小さいサウナもあって、入ってみた。炭火が焚いてあり、意外に良かった。浴場を出るときようやく気づいたが、浴場に入ってすぐのところにお湯の入ったでっかいタライがあって、そこにおっちゃんが一人いる。浴場を出る人は、このタライに使用済みタオルを投げ込んでいく。おっちゃんはそれをジャブジャブとタライの中で洗っている。横に大型のおしぼり加熱器みたいな機械が置いてあり、その外側に張り紙がしてあって、消毒済と書いてある。おっちゃんはときどきその中のタオルをまとめて取り出し、脱衣場の台のタオル置場に置く。・・・なるほど、そういうことか、さっきタオルが湿ってたのは。浴室を出て、数軒隣のスーパーで買い物をし、また路侃さんの原チャリに二人乗りして、行きと同じ勢いで紫金山を駆け抜けて帰る。
 今回はこんなちょっと不思議な感じで、路侃さん宅で南京の数日を過ごしました。王安石は鍾山で過ごした頃の詩《鍾山即事》にうたう、
澗水無声繞竹流  jian4shui3 wu3sheng1 rao4zhu2liu2
竹西花草弄春柔  zhu2xi1hua1cao3 nong4chun1rou2
茅簷相對坐終日  mao2yan2 xiang1dui4zuo4 zhong1ri4
一鳥不啼山更幽  yi1niao3bu4ti2 shan1geng1you1
 その閑静で風光明媚な環境は今も同じだ。現代的な生活からすれば多少不便さはあるが、僕にとってここでの数日間は心落ち着く快適さがあった。

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