SSブログ

南京2011(3)-江寧上坊大墓 [魏晋南北朝考古]

 南京で現在唯一、墓室内を見ることができる六朝墓が2005年に発見された江寧上坊大墓だ。南京市博物館が発掘調査を実施した。昨年も見に行ったが、その後の修復状況を見たかったのもあり、今年も路侃さんに連れて行ってもらった。その調査成果はここでは詳しく分析して述べることはできないので、関心のある方は報告原文を参照してもらいたい。(南京市博物館・南京市江寧区博物館2008「南京江寧上坊孫呉墓発掘簡報」『文物』2008年第12期)

wenwu2008_12.jpg
文物 2008年第12期
編集:文物編輯委員会
出版:文物出版社
ISSN 0511-4772



 江寧上坊大墓は墓主の個人名こそ特定できないものの、東呉の皇族墓とみられる最高級の六朝墓である。墓室長20.16m・幅10.71mという江南六朝墓中最大の規模を誇る。墓室構造は正方形に近い墓室を2室連結した前後室墓で、前室と後室の両側に1つずつ耳室がつき、後室奥壁には2つの壁龕がある。さらに注目したい特色がいくつかある。前室・後室の墓頂は「四隅券進式」の構造で、江南に特徴的な墓頂架構法である。この墓頂を実際に見られるのは馬鞍山の東呉朱然墓とここだけで、しかも朱然墓よりもはるかに巨大だ。墓頂中央は覆頂石(藻井)があり、墓室内側に獣像が彫刻され、外側に4つの把手状の耳がついている。後室にユーモラスな石雕獣像形の棺台が設置されているのも非常に珍しい。棺台上には木棺が残存しており、馬鞍山朱然墓とともに東呉の木棺の形状と構造を知りうる重要な資料だ。さらに前室と後室の四隅に石雕獣頭形の灯台が作りつけられているのは他に例がない。
 出土した隨葬品に多数の青磁があるが、とくに青磁俑のセットがあるのが注目だ。これらの俑は個別ばらばらに配置されたのではなく、どうやら主人を中心に演芸・近侍するひとつの情景を表現したもののようだ。また墓外で多数の東呉の瓦が出土しており、外表施設の陵墓建築が存在した可能性がある。
 上坊大墓はもともと道路建設の開発工事の際に発見されたが、その重要性のため急遽保存と修復が決まった。現在は一般公開されておらず、修復作業が進められている。またやはり近辺で発見された六朝磚室墓2基が上坊大墓の敷地内に移築されている。将来はこの敷地に東呉古墓博物館を建設し、一般開放されることになっている。考古学的成果が非常に豊富で、今後研究しなければならない題材がたくさんある。今後も注視していきたい古墓である。最近は河南省安陽で見つかった西高穴大墓、つまり曹操墓が日本でも話題だが、南京の江寧上坊大墓にちゃんと注目してもらいたいものだ。この墓の規模と構造を見れば、呉と魏の陵墓の違いはもちろん、安陽西高穴大墓が少なくとも考古学的には曹操墓であるに違いないことも、理解できるというものだ。

DSCN4299.jpgDSCN0414.jpgDSCN0373.jpgDSCN0402.jpgDSCN4225.jpgDSCN4229.jpgDSCN4230.jpgDSCN0394.jpgDSCN0395.jpgDSCN0397.jpgDSCN4221.jpg
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

南京2011(2)-定林山荘いただき本 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。