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志段味大塚古墳の発掘調査 [大久手古墳群発掘調査日記]

 さて調査日記を日々ブログにしていこうと思いながら、2週間ほど更新を怠けてしまった。9月27日のあと、東大久手古墳、西大久手古墳と樹木やブッシュの伐栽をおこない、掘削作業に着手したのは10月4日のことだった。
 まずは志段味大塚古墳の調査からだ。この古墳には主軸上の後円部後端(1tr.)・前方部前端(2tr.)、主軸と直交する方向の後円部北裾(5tr.)、そして両くびれ部(3・6tr.)にトレンチを入れた。後円部の2本では、周濠のプランを確認し、少量の埴輪は出土したものの、目立った成果はなかった。これらは清掃・写真と図化を残すのみだ。5tr.・6tr.はつい先日開けたばかりのため、いまのところ特記すべき所見なし。北くびれ部の3tr.は面白い。まず現状残存していた前方部側辺はかなり削平されえぐられたものらしく、やや外へ開く方向にのびる、削平された本来の前方部側辺が検出できた。葺石の転落石が多く出土したが、その石の転落レベルには多数の埴輪片が散乱していた。

そのなかに水鳥形埴輪があったことは注目すべき成果だ。くびれ部(おそらく墳丘上)に、もともと水鳥形埴輪が配置されていたということだろう。周囲にもこの水鳥のものらしい破片が散乱していた。首から上だけでも原形をとどめて出土したのは、嬉しいことだ。従来知られていなかった事実だけに、今後重要な知見になることだろう。


9月27日 [大久手古墳群発掘調査日記]

 ひきつづいて志段味大塚古墳の伐採作業。墳丘のようすがよくわかる状態になった。墳丘の特徴を観察すると、志段味大塚古墳は、後円部最下部に、後円部高の1/4程度の低い段築があり、犬走り状にテラスがめぐっている。このテラスはおおむね前方部の平坦面の高さと一致するため、現在は前方部平坦面がいくらか削平されているものの、本来は後円部テラスと前方部平坦面は連続していたと考えられる。後円部テラスより上部には段築はなく、腰高の円丘がそびえるように盛り上がる。つまり帆立貝形の平坦な低い基壇状のものに、円墳が乗ったような形態をしているわけである。大久手古墳群の分布する面よりも一段下の段丘面にある帆立貝形前方後円墳・勝手塚古墳が同様の形態である。そのため遺存状態の良好な勝手塚古墳を参考にすると、志段味大塚古墳も本来は勝手塚古墳と同様に、前方部平坦面は前端がやや上がり、また墳丘周囲には馬蹄形の周濠がめぐった可能性が高い。
 この古墳での伐採は今日で終わった。明日から東大久手古墳の伐採だ。


9月26日(月) [大久手古墳群発掘調査日記]

 以前から何度も話した、志段味大塚古墳をはじめとする大久手古墳群の発掘調査に、今日から着手した。まずは数日間、繁茂する草木を伐採しなければならない。
 今日は志段味大塚古墳の伐採をやった。墳丘測量をやるため、下草とブッシュは伐採し、樹木の低い枝は払ってもらうよう、作業員さんたちにお願いした。すると、最初はどこをどの程度伐採すればよいかといって若干戸惑っていたようだったが、やがて慣れて(というか腹をくくったという感じだったが)くると、こちらの期待を嬉しい方に裏切って、結局かなり徹底的に、丹念に伐採してくれた。
おかげで、今日の作業終了ごろには、いままでブッシュと雑木におおわれて鬱蒼としていた古墳が、墳丘の輪郭だけでなく、墳裾から墳頂部をうかがえるほどにすっきりした。こうしてみると、なかなか立派な古墳ではないですか。残存状況もよくわかるし、現状で充分墳丘の特徴を観察できる。
 志段味大塚古墳の伐採ももう一日かかりそうだし、さらにまだ東大久手古墳・西大久手古墳の伐採が残っている。そこのブッシュはもっと深い。大変だ。いつから掘削作業にかかれるんだろう・・・。


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